2023-01-01から1年間の記事一覧

King Krule / Space Heavy

ファースト・アルバムが2013年のリリースである事を鑑みると、King Kruleこそ(未だ30歳にもなっていないというのに!)現在のUKに於けるポスト・パンク・リヴァイヴァルの先駆けであったように思えて仕方無い。Tom Waitsや特にサックスの存在感に於いてJame…

Squid / O Monolith

構築的で精巧だが決してマシニックにはならず、演奏のダイナミズムとのバランスが取れたミキシングに仄かにポスト・ハードコアの残滓が感じられるという点で正にTortoiseを連想させ、John McEntireがバンドの期待に応えて良い仕事している様が窺える。音色の…

10 Best Albums Of 2022

Beyoncé / Renaissance Kenny Beats / Louie Black Midi / Hellfire FKA Twigs / Caprisongs Shygirl / Nymph JID / The Forever Story Denzel Curry / Melt My Eyez See Your Future Hudson Mohawke / Cry Sugar Kojey Radical / Reason To Smile Moor Moth…

James Holden / Imagine This Is A High Dimensional Space Of All Possibilities

M2等は低レートのサンプリング風のくぐもったレトロな音像とブレイクビーツがThe OrbやThe KLFを彷彿とさせるという意味で、確かにアンビエント・テクノ的だと言って良いだろう。90’s初頭のレイヴ・シーンに於けるアンビエントはチルアウト・ルームで掛かる…

Slowthai / Ugly

重低音の痙攣のようなサブベースの連打と断末魔のような壮絶なシャウトがDeath Gripsと聴き紛うようなインダストリアル・ヒップホップでアルバムの幕は開ける。続くM2は最早ヒップホップやグライムの枠を大きく超えて、ポスト・パンクと言った方が余程適切に…

Feist / Multitudes

M1のエレクトロニックな打撃音とサブベースが形成する重厚感のあるビートやポリフォニー、或いはチェロのチェンバーな響きと金属的なファズ・ギターの音色等の要素はまるでDirty Projectorsのようで、これまでのFeistの作風からするとやや異質ではあり、期待…

Fever Ray / Radical Romantics

無闇矢鱈と人を不安にさせる発声はやはりBjörk直系で、最初は何とかハイパー・ポップの文脈に結び付けて解釈を試みてはみたものの、Charli XCXやCaroline Polachekと並べて聴くには無理がある。唯一アッパーでレイヴィなシンセ・リフがNew OrderみたいなM7は…

Yves Tumor / Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)

トリックスターならではの一時の気の迷いだろうくらいに思っていた前作の路線を踏襲しつつ、それに輪を掛けてポップネスが追求されている。野太いベースが曲全体を引っ張る構造はそのままに、新たにグラム・ロックの一言では片付けられない多様な音楽性を獲…

Depeche Mode / Memento Mori

M1のインダストリアルなシンセ・ウェイヴ風のトラックとゴシックな歌声の組み合わせには、偶々だと思うが最近ではJohn Caleの近作と近しい感覚がある。もう少しソフトな声にどうしてもBuck-TickとかSoft Balletとかを連想してしまい、John Caleの場合よりも…

Jpegmafia & Danny Brown / Scaring The Hoes

現代オルタナティヴ・ヒップホップ2大巨塔の夢の共演と言っても過言ではないだろう。今のところフィジカルのリリースは無さそうなので、アルバムというよりもミックス・テープ的な位置付けなのかも知れないが、企画物だけに良い意味で肩の力が抜けてやりた…

Yaeji / With A Hammer

アルバム冒頭を飾るフルートの音色に、まさかチェンバー・ポップかネオ・クラシカルに鞍替えかと一瞬不安が過ったが、オールド・スクール・エレクトロのようなシンプルで快楽指数の高いビートは健在で、すぐさま安心感を覚える。やはり嶺川貴子に酷似した声…

Boygenius / The Record

現代のCrosby, Stills & Nashとは良く言ったもので、と前置きしておきながら、そんな事を言ってる人が他に居るのかどうかは知らないが、スーパーグループによる衒いの無いフォーク・ロックという点では正にそのような感じ。特に讃美歌のようなM1の美しいハー…

Lana Del Rey / Did You Know That There's A Tunnel Under Ocean Blvd

讃美歌のようなオープニングは奇しくもBoygeniusとシンクロしており、宗教的なモチーフという意味では昨年辺りから色んな作品で頻繁に見受けられるゴスペル的意匠とも通じているように思える。昨今のパンクの再興と併せて考えれば、実に在り来たりではあるが…

Young Fathers / Heavy Heavy

以前からそうだがラップらしいラップは愈々完全に消滅し、最早全くヒップホップではない。M1冒頭の呪術的でヒプノティックなグルーヴは少しCanを彷彿とさせるし、祝祭的なM3等はAnimal CollectiveやDan Deaconなんかにも近く、M4のシンセ・レイヤーにも確か…

Kali Uchis / Red Moon In Venus

相変わらず気怠く心地良くレイドバックしてはいるが、未だ60’s〜70’sのソウル風と言えそうなのはM6くらいなもので、「Isolation」の特徴であったレトロな感覚は薄まった。ソウルとラヴァーズ・ロックを混ぜたようなM4みたいな曲もあるにはあるが、カリブ音楽…

Caroline Polachek / Desire, I Want To Turn Into You

M1の野暮ったい(と言ってもあくまで中年の耳が基準であって、今の若者にはまた違った聴こえ方をするかも知れないが)シンセ・ギターが醸し出す明け透けな80’sテイストには、The Weeknd「Dawn FM」と共通する感覚があり、もしやまたもやOPMが関与しているの…

Fucked Up / One Day

タイトルは僅か一日で録音された事に由来しているらしく、確かに前作では若干鼻に付く感じのあったポスト・プロダクションの影は薄れた。ミックスも幾分ダイナミックでラフになった印象があり、手を加え過ぎて些か小綺麗に纏まり過ぎた感のあった前作に較べ…

Father John Misty / Chloë And The Next 20th Century

ビバップ以前の未だポップスと分化する前の時代のジャズやワルツがベースになっており、「I Love You, Honeybear」には未だあったインディ/オルタナティヴ・フォーク的意匠は益々薄れ、最早純然たるオールディーズとか、真の意味でのラウンジ・ミュージック…

Belle And Sebastian / Late Developers

オープニングを飾る素のままのロウなトーンのエレクトリック・ギターの弾き語りには、Belle And Sebastianにしては意外なローファイ感が漂っている。エレクトリック・ギターの存在感はM2でも続き、本質的には彼等がロック・バンドである事を再認識させられる…

Kelela / Raven

Arcaが関与した割にポップで驚かされた前作は、今にして思えばArcaがそれまで出し惜しみしていたポップ・センスを開け放つきっかけになった作品だったのかも知れない。それはさて置き、本作にはArcaは疎かJam CityやKingdom等のNight Slugsクルーも関与して…

Yo La Tengo / This Stupid World

まるで90年代の「Painful」や「I Can Hear The Heart Beating As One」の頃のYo La Tengoに戻ったかのようだ。M2は名曲「Sugercube」を彷彿とさせ、否応無しに胸を鷲掴みにされる。嘗てインディ・ロック・ファンの誰もが挙って愛したYo La Tengoの堂々たる帰…

John Cale / Mercy

人が言う程暗いとは思わない。いつの時代のJohn Caleも多かれ少なかれこんなものだったような気がする。その歌声のせいでどうしてもゴシックな雰囲気が漂いがちだが、サウンドだけ聴けば(面白いかどうかは別にして)ある種のトリップ・ホップのようだし、特…

Kojey Radical / Reason To Smile

ファットなドラム・ビートはUKヒップホップでありながらグライムやUKドリルとの関連性が希薄で、器楽演奏を多く取り込んだソウル/ファンクの要素とユニークなエレクトロニクスの混交にはChildish Gambinoに通じるものがある。それはつまりヒップホップのゲ…

Daphni / Cherry

自らプレイする為だけに作られた極めて機能的なトラック群は気持ち良い位に潔くフロアユース。はっきり言って凄いと思わされるようなところは何も無い。Dan Snaithであればこんなトラックなら大して時間も掛からず簡単に作れるだろう。恐らく90年代以降のど…

Ryuichi Sakamoto / 12

アンビエントに極めて自覚的だった細野晴臣とは異なり、意識してアンビエントを作った事は無いと豪語してきた(らしい)坂本龍一であるが、M1はAphex Twin「Selected Ambient Works Volume II」に収められていたとしても不自然ではなく、氏の中に湧き起こっ…

Stormzy / This Is What I Mean

ピアノやユニゾンのコーラスを多用したゴスペル的な意匠が前面に押し出されており、他にもエレピやギターやサックスにフルートといった器楽音の使用も目立つ。取り敢えずKano以来の、DaveやGhettsが従属する昨今のコンシャスなグライムの流れを汲んだ作品だ…

Iggy Pop / Every Loser

ゴッドファーザー・オブ・パンクことIggy Popのパンク回帰作という前評判から、何処かで期待してしまっていた部分があったのだと思うが、M1からThe Stoogesとは似ても似付かない、例えるならBilly Idolみたいなパンクとは名ばかりの、殆どハード・ロックにい…

Little Simz / No Thank You

前作「Sometimes I Might Be Introvert」とは打って変わって「Selfish」系統のミニマルなオープニングはやや意外。M2のコーラス部で漸くファンファーレめいた豪奢で大仰なストリングスが入ってくるが、90’sヒップホップ/ブーン・バップ的なヴァースのビート…

Panda Bear • Sonic Boom / Reset

パンデミックもウクライナ侵攻も無かったかのような底抜けに楽天的な曲調や、スネア・ドラムを殆ど用いず、ハンド・クラップやギロ、スレイベルといった各種パーカッション類で構築されたグルーヴ感が希薄なビートは、「Person Pitch」「Tomboy」の頃のPanda…

SZA / SOS

M4等「Ctrl」の延長線上のトラップ/アンビエントR&Bもあるにはあるが、曲調はもっと幅広く(そして曲数は多く)、総じて言えばよりポップス寄りの作風になった。M1ではBeyoncéが映画「ドリームガールズ」で歌ったソウル・ナンバーと70’sのゴスペル・ソング…