2021-01-01から1年間の記事一覧

Sons Of Kemet / Black To The Future

勝手にアフロ・キューバン的なサウンドを想像していたが、イメージに近かったのはホーンのユニゾンがラテンジャズ風のM3とM6くらいで、そのスタイルはもっと幅広い。フリージャズ的、と言うのは流石に言い過ぎだが、アブストラクトな演奏に扇情的なスポーク…

Sault / Untitled (Rise)

単に優雅だとか流麗だとか荘厳だとか言うのとは違う、些か大仰なストリングスが醸し出すM1の異物感はLittle Simz「Offence」と同質のもので、スムース・ソウル、ジャズ・ファンク、アフリカン・パーカッションのアンサンブルにブギーファンク等の要素が、次…

Leon Vynehall / Rare, Forever

決してフロア向けという感じはしないが、殊更エクスペリメンタルな訳でもなく、寧ろ最良のブレイクだけを引き延ばして寄せ集めたかのような感覚がある。解り易いアッパーさは無く、確かに2010年代以降のテクノに顕著なアンチ・クライマックス性があるが、決…

Cabaret Voltaire / Shadow Of Fear

一言で言えばFactory Floorの親のようなサウンド。インダストリアルのゴッドファーザーなのだから当たり前ではあるのだが、余りにもダンサブルなのには驚いた。M3なんかはテクノ以外の何物でもなく、Richard D JamesのCaustic Window名義の作品なんかが思い…

The Cribs / Night Network

兄弟バンドらしく、The Beach Boys風の甘ったるいハーモニーが売りではあるのだろうが、上手いとはお世辞にも思えない。他には申し訳程度のファズ・ギターで歪ませただけで何の変哲も無いポップス。何もポップスが悪い訳では全くないが、その語が想起させる…

Against All Logic / 2017 - 2019

M1はTom Tom Clubのハウス・ミュージック解釈といった感じで面白い。成程Nicolas Jaarは自らのクラシカルの素養とハウス・ミュージック・プロデューサーとしてのキャリアを名義によって明確に分ける事にしたのかと、今更ながら納得する。と言っても勿論決し…

St. Vincent / Daddy's Home

ファンクがアルバムの基調になっているところはTune-Yards「Sketchy.」と共振するようで、M3のSt. Vincentにしては珍しいスクリームなんかもまるでMerrill Garbusを見倣ったかのようだ。尤もベースとドラムのみでタイトなファンクネスを聴かせていた「Sketch…

AJ Tracey / Flu Game

Wileyを少し若々しくスマートにした感じの声質で、ジャスト・タイミングで細かくリズムを刻む切れの良いのファスト・フロウは快楽指数が高い。ラップ自体にメロディの要素は希薄で、Headie Oneよりも硬派でSlowthaiよりもずっとグライムの伝統に忠実な印象を…

Lana Del Rey / Chemtrails Over The Country Club

M6は未だトリップ・ホップ的と言えなくもないが、全般的にブラシや微細なパーカッションがテンポ・キープする曲が多く、スネア・ドラムの存在感は薄い。人が言う程にはアメリカーナの印象は強くはないが、確実にフォーク化しているとは言え、どんどんと近年…

Dinosaur Jr / Sweep It Into Space

キャッチーなM1やM6は、Murphがポップでフレンドリーと評した前作を踏襲している。(前作と同じくLou Barlow作の曲もきっちり2曲で、何か契約でも結んでいるのだろかと訝しんでしまう。)M7のアコースティック・ギターとディストーションのコンビネーション…

Godspeed You! Black Emperor / G_d's Pee At State's End!

当時は兎角暗黒だとかいった接頭辞を冠されがちだったと記憶しているが、M4終盤の美しくセンチメンタルで、寧ろ後には希望しか残らないような旋律には、まるでそのような形容は似つかわしくない。(勿論全くの偶然だろうが、Oneohtrix Point Never「Good Tim…

Serpentwithfeet / Deacon

精巧なヴォーカル・レイヤーによるポリフォニックなコーラスはMoses Sumneyに通じる。特にM5のインタールード等はゴスペル/クワイア的なホーリーなイメージを喚起させるし、M10に至っては一人でヴォーカル・グループを模しているかのようだ。とは言えMoses …

Floating Points Pharoah Sanders & London Symphony Orchestra / Promises

確かに漫然と流しっ放しにしている分には地味で、耳を持っていかれるようなキャッチーなフックも無いが、どっぷりとその音世界に身を浸す事で得られる聴取体験は豊潤だ。集中的聴取が要求されるという意味ではやはりSam Shepherdらしい作品だと言える。Pharo…

Foo Fighters / Medicine At Midnight

アルバム全編に渡って登場するチージーな女声コーラスは流石にやり過ぎの感が否めず、80年代のThe Rolling Stonesみたいで何とも気持ち悪い。と思ったらインスパイア元はDavid Bowie「Let’s Dance」という事だが、まぁどっちでも良い。因みにこのバッキング…

Mogwai / As The Love Continues

前作の「Party In The Dark」に続くような歌物のM4や「Siamese Dream」の 頃の Smashing PumpkinsようなM7は、良くもまぁ飽きもせずと関心する程にワンパターンと言えばそれまでだが、前作ではBloodthirsty Butchersを思わせるような轟音に比重が置かれてい…

Ghetts / Conflict Of Interest

コンシャスネスを醸し出す声色にオフビートのフロウとファスト・ラップ、ピアノや管弦楽器を多用したリリカルで、時に蒸せ返る程にメロドラマティックな作風はKanoを思わせる。ソウルフルな女声ヴォーカルをフィーチャーしたM10は何処かThe Roots「Undun」に…

Tune-Yards / Sketchy.

エレクトロ色の強かった前作に較べて、シンバルを殆ど用いないブレイクビーツ風のプリミティヴな生ドラムのサウンドが復活し、更にはシンプルなベースがより前面に押し出される事で「Whokill」に通じるファンクネスが横溢している。とは言え同作の特徴であっ…

Cloud Nothings / The Shadow I Remember

冒頭ピアノの音色に、また似たようなアメリカン・インディ・ロックかと思ったが、紛れも無くSteve Albiniによる目の粗い乾き切ったギター・サウンドと、M1の後半で急に前のめりで進み始めるドラムに、懐かしく狂おしく泣きたくなるような感情が呼び覚まされ…

Lil Uzi Vert / Eternal Atake

冒頭のチージーなシンセ・リフ主体のバックトラックは退屈で、メロディを歌うラップのスタイルには流石にもううんざりとさせられるが、それでもしっかりとした抑揚がありこれだけファストなフロウというのはそれなりに凄味もあるし、FutureやYoung Thugの二…

Nicolas Jaar / Cenizas

第一印象はとにかく地味。一定のリズムにメロディと歌があり、一応ポップ・ソングの形態を纏っているが、折衷主義は少なくとも表面上は抑制され、ポスト・クラシカルに接近したような印象を受ける。鍵盤楽器を中心としたコンポジションもあり、ムードとして…

Slowthai / Tyron

想像を遥かに超えるスピードで過去のものとなったダブステップに較べて、グライムは実にしぶとく生き残り、見事に世代交代を果たしたものだと思う。現在のスターダムの筆頭は勿論StormzyとSteptaだろうが、実はWileyやDizzee Rascal等オリジネーター世代との…

Headie One / Edna

何処か未熟さを残したJay-Zみたいな声色自体は、例えばSlowthaiなんかと較べてしまうと魅力に乏しいし、余りラップが巧いとも思えない。最近ではHeadie Oneに限った話ではないが、特にアルバム前半に顕著な歌うようなメロディアスなラップはもう流石に食傷気…

Paul McCartney / McCartney III

ロックンロール以前のルーツ・ミュージックを伴奏にして老いに寄り添うようなBob Dylan「 Rough And Rowdy Ways」と較べると確かに若々しいとは言えるかも知れない。とは言え老人が作った音楽だからと言って、若さだけで称賛するのは作り手に対して失礼極ま…

The Soft Pink Truth / Shall We Go On Sinning So That Grace May Increase?

個人的に(ディープ・) ハウスがキーワードとなった2020年に、18年振りにThe Soft Pink Truthの新作を聴くというのは何とも因果な感じで、必然的にハウス・ミュージックとの距離感に先ず興味が向かったが、焚き火の破裂音のような微細なノイズや、Grouperや…

Weezer / OK Human

オーケストレーションやストリングスのアレンジメントの優劣は門外漢過ぎて判断が付かないが、少なくとも「The Green Album」以降で最も自然と耳が曲を追い掛けていると言うか、率直に惹きつけられるものがあるのは確か。例えばBrian Wilsonのような人が聴い…

Julianna Barwick / Healing Is A Miracle

クワイアのようなM1を始めとして、やはりJulianna Barwickの声は段々と歌に近付いているように思える。(低周波のシンセ・ドローンは無視出来ない要素ではあるものの。)本作に限って言えばEnyaと較べられるのも無理は無いようにも思え、要はエクスペリメン…

Bright Eyes / Down In The Weeds, Where The World Once Was

少しJeff Tweedyを彷彿とさせる舌足らずなヴォーカルや、細部にまで音響に対する拘りを感じさせる点にはWilcoフォロアーな感じもあるが、イントロの冗談めかしたラグタイムはともかくとして、あからさまなカントリーやアメリカーナの引用は無い。オーケスト…

Oneohtrix Point Never / Magic Oneohtrix Point Never

Daniel Lopatinの原点回帰の触れ込みやラジオにインスパイアされたという前情報に違わず、ラジオのジングルを茶化したかのようなインタールードに挟まれた80’sポップス風のサウンドからは「歯医者の治療音とその場に流れるBGMのソフト・ロック」というOPN最…

Jay Electronica / A Written Testimony

Louis Farrakhanのアジテーションに広島への原爆投下を伝えるアナウンス、アルバムの随所で差し込まれる子供達の歓声(Boards Of Canada「Music Has The Right To Children」を連想させる)といった要素が、何らか通底するコンシャスなコンセプトやストーリ…

Bicep / Isles

単なる宣伝文句かも知れないが、ネクストDisclosureというのも全英チャート初登場2位という結果を前にしては強ち大袈裟では無いと思わざる得ない。Ninja Tuneにとっても久々のヒット(と言う程そもそもNinja Tuneがそれ程大ヒットを産んだ記憶は無いのだが…